脳神経センター大田記念病院は、1976年の開院以来、脳血管疾患の急性期医療を中心とした脳心血管疾患、脳神経疾患、脊椎脊髄疾患、神経難病などの診療に取り組んでいます。急性期脳卒中は年間約1,200人(2022年)という全国でトップクラスに多い入院診療を行っており、引き続き脳血管疾患の専門医療とともに危険因子が共通する心血管疾患の診療を推進していきます。
近年は、国が推し進める地域包括ケアシステムにおける福山市南部のコア・ホスピタルを目指し、地域に必要とされる外科や整形外科など多様な診療科目の充実を図るとともに、地域の「かかりつけ医」を目指して明神館クリニック(http://www.myojin-kan.jp/)に加えて、2018年に沖野上クリニック(https://okinogami-cl.jp/)を開設し、また訪問看護や通所リハビリ、外来リハビリなど、在宅療養を支える仕組みにも力を入れています。
地域包括ケアシステムのことを「ときどき入院、ほぼ在宅」と言い表した新聞記事がありました。平常時は住みなれた家で過ごし、万が一、体調が優れないときは入院する、という考え方ですが、まさに当院と祥和会グループ(https://www.shouwa.or.jp/)は、急性期の治療から、回復期、生活期のリハビリテーション、介護、在宅医療まで切れ目なく提供する「ケア・サイクルづくり」を目指しています。
これまで、安心した在宅療養を続けていただくために、万が一の急変に対応する「断らない救急」を目指して多くの救急の受入要請に対応してまいりました。2022年は、年間約2,500台の救急搬入を受け入れ、そのうち約半数が入院となっています。今後は、地域の基幹病院やかかりつけクリニックと協働で脳卒中など当院専門分野を重点とした医療の提供に注力し、皆さまの生活に支障のないよう変革を進めてまいります。
重点領域としての取り組み
脳神経センター大田記念病院では、以下の事項を重点課題として、取り組んでまいります。
地域の医療機関と連携した脳卒中診療の向上
2019年12月に脳卒中・循環器病対策基本法が施行され、脳卒中の死亡を減少し、健康寿命を延伸する取組を推進することになりました。日本脳卒中学会は急性期脳卒中診療体制の構築を開始し、2019年10月に当院は「一次脳卒中センター(血栓溶解療法が24時間365日可能な施設)」として認定されました。2020年10月には「一次脳卒中センターコア施設(機械的血栓回収療法が24時間365日可能な施設)」として、地域において中核となる一次脳卒中センターとして委嘱を受けています。そのために「脳卒中センター」(https://otahp.jp/medical/vascular/)を中心として他職種で協調する院内体制を強化し、「備後脳卒中ネットワーク」(https://otahp.jp/region/storknetwork/)と協働して地域の医療施設との連携を充実し、「ひろしま脳卒中地域連携クリニカルパス」(http://citaikyo.jp/pass/nousotchu.html)を活用して地域の脳卒中診療のさらなる向上を目指します。
神経難病診療の推進
当院は脳血管疾患の診療とともに神経難病といった脳血管疾患以外の脳神経疾患も数多くの患者さんの診療を行っています(https://otahp.jp/medical/true/parkinson/)。当院を受診している指定難病の患者数は年間約1,200人であり、指定難病の認定患者数は年間約500人で、これは福山市の神経難病の認定患者の約5割になります。当院は「広島県難病医療ネットワーク」において神経・筋疾患分野における「神経難病センター」となっています(https://otahp.jp/intractable/)。そこで、備後地域の医療・介護・福祉施設などと連携して神経難病診療の充実と向上を図っていきます。
地域の医療機関・介護施設等との連携に努めます
患者さんが円滑に当院へ受診・入院できるように、そして退院・転院できるように、地域の医療機関・介護施設などや福祉や行政に関わる機関との連携を推進していきます。さらに、「広島県地域リハビリテーション広域支援センター(https://otahp.jp/region/region_reha/)」として、福山・府中圏域における地域住民の皆様が住み慣れたところで安心した生活が継続できるように医療・介護・福祉・保健関係者と協力して地域包括ケアを支える体制を整備していきます。
多様な病床機能を生かし、在宅復帰を支援します
大田記念病院は、2015年に「地域包括ケア病棟」を、2018年には「回復期リハビリテーション病棟」を開設しました。いずれも急性期治療を受けた後に在宅復帰を目的とした病床であり、患者さんが自宅や自宅に類する施設へ戻るとき、つまり在宅療養へ移行するための支援が重要となります。
当院では、通所リハビリを提供しており、またグループの「祥和会訪問看護ステーション」が、訪問看護・訪問リハビリを行っており、安心して在宅復帰できる体制を整えています(https://otahp.jp/region/home_support/)。
また、地域における医師不足が深刻化する現状を受けて、2024年の「医師の働き方改革」に先立ち、時代に即した診療体制に更新するため、祥和会グループの本院に在籍の医師を分院の明神館クリニック、沖野上クリニックに配し、身近なかかりつけ医として地域の患者さまの健康や介護福祉に関するお悩みをサポートする体制を整えました。
さらに、グループ法人「社会福祉法人祥和会」が運営する地域密着型特別養護老人ホーム・ショートステイ・デイサービス「五本松の家」とも連携しています
(https://5pines.jp/)。
質の高い地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟を目指します
地域包括ケア病棟(https://otahp.jp/region/care_ward/)は、急性期病院などから急性期治療を終えた患者さんの受け入れや、在宅や介護施設などで療養されている方の緊急時などに受け入れを行い、在宅や介護施設などへの復帰支援を行います。
回復期リハビリテーション病棟(https://otahp.jp/medical/reha/recovery/)は、「入院料1」および「体制強化加算1」を届け出ており、より早期の在宅復帰やより良好な機能回復を目指しています。
これらの回復期病床では、医師、看護師、介護士、療法士、社会福祉士、管理栄養士、薬剤師などが一体となり、診療の質の向上・維持に努めていきます。
感染管理と医療安全に積極的に取り組みます
私は、病院の管理者として、最も大切なことの一つは、感染管理と医療安全であると考えております。専門の部門に専門の担当者を配置し、院内の状況把握に努め、病院全体で対策を図るとともに、職員の教育・研修を継続的に、繰り返し行ってまいります。
職員を対象とした教育・研修の充実
病院の現場では、新たな知識や技術を取り入れるとともに、法律を根拠とする医療・介護制度についても最新の動きを確認し、患者さんが安心して受診いただけるようにする必要があります。そこで、職員に必要性の高い課題の教育・研修を継続的に提供し、また院外の教育・研修への参加を奨励する体制の整備に努めます。
「働き方改革」の推進
国が進める「医療従事者の負担軽減」「働き方改革」を推進するために、他職種との業務分担、チーム医療の充実、クリニカルパスの活用促進などを積極的に実施しています(https://otahp.jp/outline/)。地域の皆さまに安定した医療サービスをお届けできるよう、「多様な採用方法と雇用形態の導入」「多様な勤務形態、勤務シフトの導入」「海外人材の登用」等を進めてまいります。
WEBによる予約システムの導入
待ち時間の削減や医療の効率化を図るため、WEBによる予約システムの導入を進めてまいります。
引き続き脳疾患診療を中心とした専門性の高い医療サービスを提供し、関係医療機関や介護施設、行政、消防や地元企業、町内会をはじめとする自治組織などの皆さまと連携体制を強く築き、この備後の地で安心して暮らすことができる医療・介護の体制が提供できるよう、惜しまず努力を続けていく所存でございます。
福山の皆さま、備後の皆さま、何卒よろしくお願い申し上げます。
経歴・プロフィール
- 1988年
- 岡山大学医学部放射線科入局
- 1989年
- 岡山旭東病院
- 1991年
- Mount Sinai Medical Center(アメリカ)留学
- 1992年
- Hospital Bicetre(フランス)留学
- 1993年
- 太子病院
- 1997年
- 岡山大学医学部放射線医学教室 助手
- 2001年
- 脳神経センター大田記念病院 放射線科部長
- 2006年
- 脳神経センター大田記念病院 副院長
- 2023年
- 脳神経センター大田記念病院 院長就任
主な診療分野
■ CT・MRIなどの画像診断
■ 血管撮影
■ 脳ドック
専門医・資格
■ 日本医学放射線学会 放射線診断専門医
■ 日本核医学会 認定医