膠芽腫とは
膠芽腫(こうがしゅ)は、「グリオブラストーマ」と呼ばれる脳のなかに発生する悪性の脳腫瘍です。ほとんどの場合、大脳に発生して、周囲の脳に滲み込むように広がります。具体的には脳の神経細胞を支える神経膠細胞(星細胞、グリア)が腫瘍化したものです。
肺などの他の部位に転移することはほとんどありませんが、急激に増大します。言い換えれば進行が早い病気です。そのため「ある日突然発症した」ように感じる患者さんがいます。
膠芽腫は、小児で発生することはとても稀で、多くの患者さんはご高齢の方です。
どんな症状が起きるか
腫瘍が大きくなるにつれ脳が圧迫されるため、次のような症状が表れることがあります。
- 頭痛(毎日続き、かつ、少しずつ強くなる)
- 吐き気がする、嘔吐する
- 記憶障害
- 性格が変わる
また、腫瘍が発生した場所によっては、てんかん発作を起こしたり、右もしくは左半身に運動麻痺を起こすことがあります。
膠芽腫の治療
初めて膠芽腫が見つかった場合、症状を悪化させないよう開頭手術によって、腫瘍をできるだけ切除します。手術後、できるだけ早く放射線治療をはじめ、同時に、抗腫瘍薬による治療(化学療法)も受けます。放射線治療が終わった後も、抗腫瘍薬による治療が続きます。
そして化学療法が終わった後は、初発の患者さんを対象に維持療法として、当院では「交流電場腫瘍治療(オプチューン®)」が行われることがあります。
交流電場腫瘍治療とは
①「電場」とは? 「電場治療」とは?
電場とは、電流でも、磁気でもありません。「電気的な力が作用する空間」のことです。電気を帯びている周りに電場が発生します。これを「重力のようなもの」と、たとえ話で説明する人もいます。
交流電場腫瘍治療は、低強度の交流電場を脳の中に発生させ、電場の力によって、急速に増殖している腫瘍細胞内の微小管に影響を与えて、細胞分裂を阻害して、腫瘍細胞が死滅するように作用するとされています。
②具体的にどんな機器を使うの?
セラミック製の板が仕込まれた4枚の電極パッド「アレイ」を、剃髪した頭皮に貼り、アレイと機器本体をコードでつなぎます。アレイを貼る場所は、MRIで撮影した画像をもとに、腫瘍がある場所を確認し、医師が説明します。機器はアレイへ電流を流すとともに、1日に何時間治療を行ったか記録します。
③どのくらい装着するの?
1日18時間以上の使用が推奨されています。よって、就寝時も装着して、機器を稼動させたままで過ごします。また、治療効果を得るには、少なくとも4週間以上の継続使用が必要と考えられています。
治療中の暮らしは?
- 外出のときは、機器をショルダーバックやリュックに入れ持ち歩きます。機器本体とバッテリーをあわせて重さは約1.2kgです。
- バッテリー1個で2~3時間使用できます。よって、長時間の外出の場合、予備バッテリーや電源アダプターを持ち歩きます。
④副作用はありますか。
交流電場腫瘍治療では、全身への副作用を起こすことはない、と考えられています。ただ、アレイを頭に貼るため、皮膚炎症を起こすことがあります。
稀に頭痛、脱力、転倒、疲労、筋攣縮、皮膚潰瘍が起こることがあります。
⑤保険診療の対象ですか。
2017年12月から、「一定の基準」を満たす医療機関において、初発のときに限り、保険による治療ができるようになりました。脳神経センター大田記念病院は、「在宅腫瘍治療電場療法指導管理料」の届出施設となっています。
なお、再発膠芽腫の場合、保険適用外で、自由診療となります。
■詳しくはこちらのページ(機器メーカーが解説する腫瘍治療電場療法(オプチューン®)のページ)もご覧ください
【この件についてのお問い合わせ】 脳神経センター大田記念病院 医局
イラスト・写真提供/ノボキュア株式会社